この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。

この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。
サロンを開業すると、日々の売上管理が欠かせません。経営状況を正しく把握するためはもちろん、確定申告の際にも必要になるからです。とはいえ「売上管理といっても、何をどう記録すればいいのか分からない」という方は多いのではないでしょうか。この記事では、500以上のサロンを支援してきた株式会社イレブンが、売上管理で記録すべき項目、手書き・エクセル・クラウド会計それぞれの方法、そして2026年に必ず押さえておきたい法制度までを分かりやすく解説します。
売上管理は「面倒な事務作業」ではなく、サロンを成長させるための経営ツールです。大きく2つの目的があります。
個人事業主として開業した以上、毎年の確定申告は避けて通れません。売上と経費を正確に記録しておかなければ、申告書の作成に膨大な時間がかかり、最悪の場合は正しく申告できずペナルティを受けるリスクもあります。特に節税効果の大きい青色申告(最大65万円控除)を選ぶ場合は、複式簿記での記帳が要件となるため、日々の記録が必須です。確定申告の直前に慌てないためにも、日常的な記録の習慣が大切です。
売上管理のもう一つの価値は、「今のサロンがうまくいっているか」を数字で把握できることです。目標に対して現在どの位置にいるのか、どのメニューが人気なのか、どの集客経路からお客様が来ているのか。これらが分かれば、感覚ではなくデータに基づいた経営判断ができます。売上が伸び悩んだときも、原因が「新規客の減少」なのか「リピート率の低下」なのかが分かれば、打つべき対策が明確になります。
売上管理では、確定申告に必要な「基本項目」と、経営分析に役立つ「分析項目」の2種類を記録します。難しく考える必要はありません。次の表を参考に、自店に必要な項目から始めましょう。
| 区分 | 項目 | 記録する理由 |
| 基本項目 (申告に必須) | 日付 | いつの売上かを特定するため |
|---|---|---|
| 提供メニュー | 何が売れているかを把握するため | |
| 金額 | 売上高の集計に不可欠 | |
| 支払い方法 | 現金・カード・電子マネーの入金管理のため | |
| 分析項目 (経営改善用) | 集客媒体 | 広告の費用対効果を測るため |
| 来店回数 | リピート率を把握するため | |
| 施術・滞在時間 | 時間あたりの生産性を知るため |
新規のお客様が「何を見て来店したか」を記録しましょう。Instagram、Googleマップ、紹介、チラシなど、経路を把握することで、どの施策が効果を上げているかが見えてきます。特に広告費をかけている媒体については、費用に対して何人の新規客を獲得できたか(顧客獲得単価)を必ず確認してください。効果の高い媒体に予算を集中させ、効果の薄い媒体を削るという判断が、限られた広告費を最大限に活かす鍵になります。
お客様が何度目の来店かを記録すると、サロンの生命線であるリピート率を把握できます。新規客が多くてもリピーターが育たなければ、常に広告費を払い続けることになり、利益が残りません。反対に、リピート率が高ければ広告費を抑えても安定した売上を確保できます。来店回数の記録は、施術やサービスにお客様が満足しているかを測る、最も正直な指標といえます。リピート率の高め方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

お客様の来店から退店までの時間を記録すると、1日の稼働状況と「時間単価」が見えてきます。同じ1万円の売上でも、1時間で得るのと5時間かかるのとでは、経営効率がまったく違います。一人で施術するサロンでは1日に対応できる人数に限りがあるため、時間あたりの生産性を高めることが収入アップの近道です。この数字を把握しておくと、「新規集客に投資すべきか」「単価を上げるべきか」という戦略判断もしやすくなります。
イレブンからのアドバイス最初から全項目を完璧に記録しようとすると挫折しがちです。まずは「日付・メニュー・金額・支払い方法」の4つから始めて、慣れてきたら集客媒体や来店回数を足していきましょう。続けられる形にすることが何より大切です。
売上管理の方法は、大きく「手書き」「エクセル」「クラウド会計ソフト」の3つに分かれます。それぞれメリット・デメリットがあるため、サロンの規模や自分のスキルに合った方法を選びましょう。
| 方法 | 費用 | メリット | デメリット | 向いている人 |
| 手書き | ほぼ0円 | すぐ始められる、手軽 | 集計が大変、紛失リスク、申告に手間 | 開業直後、副業でお客様が少ない方 |
|---|---|---|---|---|
| エクセル | 0円〜 | 自由に項目を設計でき、集計を自動化できる | 自分で表を作り込む必要がある | 表計算に慣れている方 |
| クラウド会計 | 月額数百円〜 | 入力が簡単、確定申告まで完結、法改正に自動対応 | 月額費用がかかる場合がある | 手間を減らしたい方、青色申告をする方 |
紙とペンさえあれば始められる、最も手軽な方法です。特別な準備もスキルも不要なため、開業したての時期には十分機能します。ただし、デメリットは集計の手間と保管の負担です。月末や確定申告の時期に、一件ずつ手作業で合計を計算する必要があり、お客様が増えるほど労力が膨らみます。また、記録した用紙を紛失すると売上と帳簿が合わなくなるため、保管にも注意が必要です。お客様が少ないうちの一時的な方法と考えるのが現実的でしょう。
エクセルやGoogleスプレッドシートの魅力は、自由度の高さです。自分のサロンに必要な項目だけを、入力しやすい形式で設計でき、関数を使えば集計も自動化できます。売上の推移をグラフ化して分析することも可能です。一方で、その表を一から作り込む必要がある点がデメリットです。どの項目をどの順番で並べるか、どう自動集計するかを自分で設計するには、ある程度の知識と時間が求められます。表計算の操作に慣れている方に向いた方法です。
クラウド会計ソフトは、インターネット上にデータを保存して管理する方法です。あらかじめ決まったフォーマットに入力するだけなので操作が簡単で、そのまま確定申告書類まで作成できるソフトがほとんどです。スマホやタブレットからも入力でき、レシートを撮影するだけで自動読み取りできる機能もあります。月額費用がかかる場合がありますが、削減できる時間と手間を考えれば、十分に元が取れる投資といえます。また、後述する電子帳簿保存法などの法改正にソフト側が自動対応してくれる点も、大きな安心材料です。



迷ったらクラウド会計を選んでおくのが無難です。理由は、法改正への対応を自動でやってくれるから。手書きやエクセルだと、法律が変わるたびに自分で調べて対応する必要があります。本業の施術に集中するためにも、仕組みに任せられる部分は任せましょう。
クラウド会計ソフトの中でも、個人事業主に広く使われている代表的な3つを紹介します。いずれも無料お試し期間があるため、実際に触って自分に合うものを選ぶのがおすすめです。
| ソフト | 特徴 | 無料お試し | 向いている人 |
| freee会計 | 簿記知識がなくても直感的に操作できる。スマホアプリとレシート読取が充実 | あり | 会計がまったく初めての方 |
|---|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド | 家計簿アプリとの連携が可能。銀行・カード連携に強い | あり | 簿記の知識がある方、家計簿アプリ利用者 |
| やよいの青色申告 オンライン | クラウド会計シェアNo.1(MM総研調べ)。電話サポートが手厚い | 初年度無料 | サポート重視の方、コストを抑えたい方 |
freeeの最大の強みは、簿記の知識がなくても直感的に操作できる設計です。「〇〇を買った」「売上が入った」といった質問に答えていく形で記帳できるため、会計に苦手意識がある方でもストレスなく続けられます。スマホアプリの完成度も高く、レシートを撮影するだけで内容を読み取ってくれる機能は、忙しいサロンオーナーの強い味方です。なお、最安プランには機能制限がある場合があるため、必要な機能が含まれるかを確認してから契約しましょう。
マネーフォワードは、家計簿アプリでおなじみのサービスが提供する会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードとの連携機能が充実しており、明細を自動で取り込んで仕訳してくれます。家計簿アプリを使っている方は操作に馴染みやすいでしょう。ただし、freeeに比べると簿記の基本的な考え方を理解している方向けの設計です。会計がまったく初めてという方は、他のソフトから始めた方がスムーズかもしれません。
やよいは、クラウド会計ソフトのシェアNo.1(MM総研調べ)を誇る老舗です。最大の魅力は、初年度が無料で使える点。1か月程度のお試しでは使い勝手を判断しにくいものですが、1年間じっくり試せるのは大きなメリットです。また、電話サポートが充実しており、「操作が分からない」というときに人に聞ける安心感があります。初めて会計ソフトを使う方や、調べながら進めるのが苦手な方に心強い選択肢です。



料金プランは各社とも改定されることがあるため、契約前に必ず公式サイトで最新の金額と機能を確認してください。どのソフトも無料期間があるので、実際に1週間ほど触ってみて「自分が続けられそうか」で選ぶのが失敗しないコツです。
売上管理の方法を考えるうえで、避けて通れないのが法制度への対応です。特に「電子帳簿保存法」は、個人事業主のサロンオーナーも対象となる重要なルールです。知らずに違反してしまわないよう、基本を押さえておきましょう。
2024年1月から、電子取引で受け取った書類は電子データのまま保存することが完全義務化されました。猶予期間はすでに終了しており、個人事業主を含むすべての事業者が対象です。「メールで届いた請求書PDFを印刷して紙で保管」といった従来のやり方は、原則として認められません。サロン経営でも該当する取引は意外と多いため、次のような書類がないか確認してみてください。
なお、義務なのは「電子取引データの保存」のみで、紙で受け取った領収書をスキャンして保存する(スキャナ保存)ことは任意です。紙のレシートは紙のまま保管しても問題ありません。
「難しそう」と感じるかもしれませんが、小規模サロンがやるべきことはシンプルです。電子データの保存には、改ざん防止措置と検索できる状態にすることが求められますが、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者には検索要件の緩和措置があります。具体的には、ファイル名に「日付・金額・取引先」を入れてフォルダで整理する方法が現実的です。
専用フォルダを作り、ファイル名を次の形式で統一する
「20260401_15000_○○商事.pdf」(日付_金額_取引先)
あわせて「訂正・削除を行わない」旨の事務処理規程を作成しておくと、改ざん防止措置の要件を満たせます。国税庁のサイトにひな形が公開されています。
なお、クラウド会計ソフトの多くは電子帳簿保存法に対応した保存機能を備えているのが実情。自分でルールを作って運用するのが不安な方は、ソフトに任せてしまうのが最も確実で手間もかかりません。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除に関わる制度です。登録は任意であり、売上1,000万円以下の免税事業者は必ずしも登録する必要はありません。判断の分かれ目は「お客様が誰か」です。サロンのお客様が一般の個人であれば、インボイスを求められる場面はほとんどないため、登録しないという選択が一般的です。一方、法人契約や経費で来店される事業者のお客様が多い場合は、インボイスを発行できないと選ばれにくくなる可能性があります。自店の客層を踏まえ、必要に応じて税務署や税理士に相談しましょう。



法制度の話は難しく感じますが、「電子で受け取ったものは電子で保存する」――まずはこれだけ覚えておけば大丈夫です。クラウド会計ソフトを使っていれば、多くは自動で対応できます。不安な方は、開業時に一度税理士の無料相談を利用しておくと安心ですよ。
記録した数字は、見返して初めて価値を生みます。ただ記録するだけで終わらせず、月に一度は数字を振り返る時間を作りましょう。ここでは、サロン経営で特に注目したい3つの視点を紹介します。
客単価は「売上 ÷ 来店人数」で算出できます。一人で施術するサロンでは対応人数に限りがあるため、収入を伸ばすには客単価を上げるのが現実的な道です。客単価の推移を毎月追うことで、高単価メニューやオプションの提案がうまくいっているかが分かります。数字が伸び悩んでいるなら、メニュー構成の見直しや物販の提案強化を検討しましょう。
来店回数の記録から算出できるリピート率は、サロンの健康状態を示すバロメーターです。新規客がリピートにつながっていないなら、施術内容そのものよりも、次回予約の案内やアフターフォローに改善の余地があるかもしれません。リピート率が安定すれば売上の予測が立てやすくなり、広告費に頼らない経営が可能になります。
集客媒体の記録があれば、「広告費 ÷ その媒体からの新規客数」で顧客獲得単価が分かります。例えば、5万円の広告で10人来店したなら1人あたり5,000円。この金額と客単価・リピート率を照らし合わせれば、その広告が利益を生んでいるかを判断できます。無料で始められるInstagramやGoogleビジネスプロフィールからの集客が伸びているなら、有料広告を減らすという選択も可能です。売上や収入の目安については、こちらの記事も参考になります。





数字を見る習慣は、月末の30分でも十分です。「今月の客単価・リピート率・新規数」の3つだけを毎月メモしておくと、半年後には自店の傾向がはっきり見えてきます。感覚に頼らない経営が、サロンを長く続ける力になります。
法律上、手書きでの記帳が認められないわけではありません。ただし、集計に手間がかかること、用紙を紛失するリスクがあること、青色申告の複式簿記に対応しづらいことがデメリットです。また、電子取引データについては電子保存が義務のため、紙だけで完結させることはできません。開業直後の一時的な方法としては有効ですが、お客様が増えてきたらクラウド会計への移行をおすすめします。
記録は「その日のうち」が理想です。後回しにするほど記憶が曖昧になり、正確性が下がります。施術後の片付けの流れで入力する習慣にすると続けやすいでしょう。そのうえで、月に一度は集計した数字を振り返り、客単価・リピート率・新規客数などを確認する時間を作ることをおすすめします。日々の記録と月次の振り返り、この2つをセットにするのが効果的です。
必要です。2024年1月から、個人事業主を含むすべての事業者に電子取引データの電子保存が義務化されています。メール添付の請求書PDF、ネット通販の領収書、クレジットカードのWeb明細などが対象です。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者には検索要件の緩和措置があり、ファイル名に「日付・金額・取引先」を入れてフォルダ管理する方法で対応できます。クラウド会計ソフトを使えば、より確実です。
お客様の層によります。登録は任意で、売上1,000万円以下の免税事業者は必ずしも登録する必要はありません。お客様が一般の個人中心であれば、インボイスを求められることはほとんどないため、登録しない選択が一般的です。一方、法人契約や経費で来店される事業者のお客様が多い場合は、登録を検討する価値があります。判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
目的が違うため、分けて管理するのが基本です。売上管理は会計・申告のため、顧客管理(カルテ)は施術履歴や肌の状態などサービス向上のためのものです。ただし、来店回数や利用メニューは両方に関わるため、連携できると便利でしょう。サロン専用の予約管理システムには、売上と顧客情報を一元管理できるものもあるので、規模が大きくなってきたら導入を検討するとよいでしょう。
売上管理は、面倒な事務作業ではなく、サロンを成長させるための羅針盤です。数字を把握していれば、売上が落ちたときも原因を特定して手を打てますし、順調なときはその要因を再現できます。まずは記録を習慣にすることから始めましょう。株式会社イレブンは、500以上のサロンを支援してきた知見をもとに、経営数値の見方から集客・メニュー設計・機器選定まで、サロン経営をトータルでサポートしています。「数字をどう活かせばいいか分からない」という段階のご相談も大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。