この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。

この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。
エステサロンの成約率は、技術以前の「カウンセリング」で9割決まります。お客様が「この人になら任せたい」と感じる信頼関係を、いかに短時間で築けるか。それがリピートと高単価契約の分かれ道です。本記事では、美容商社(株)イレブンが、全国のサロン様を支援してきた実績に基づき、明日から使えるカウンセリングの極意を、マニュアルとして徹底解説します。
カウンセリングは、単なる「お悩み聞き」ではありません。お客様の「未来(ゴール)」を共有し、そこへ至る「最適で安全な地図」を一緒に作る共同作業です。この「設計図」の質が、サロンの信頼とお客様の結果、ひいては経営の安定を左右する、最も重要なプロセスなのです。
カウンセリングの最大の目的は、お客様の「ゴール」を明確にし、そこへ安全かつ最短で到達するための「設計図」を作成することです。なぜなら、お客様の悩みや体質を正確に把握しなければ、最適な施術(結果)を提供できず、万が一のトラブル(安全)にも繋がるからです。例えば、生活習慣をヒアリングし、施術とホームケアを組み合わせたプランを設計します。この丁寧なプロセスこそが「信頼」を生み、お客様の「継続」意欲に火をつけるのです。
カウンセリングで技術(テクニック)以上に重要なのが「基本スタンス」です。
まず、お客様の悩みに寄り添う「共感」と、否定せず最後まで話を「傾聴」する姿勢が信頼の土台となります。次に「可視化」し、最後にプランを「合意形成」します。このスタンスが「押し売りされた」という不信感を防ぎ、お客様の主体性を引き出します。
カウンセリングは、お客様の安全と権利を守る「倫理」と「法令遵守」の場でもあります。アレルギーや既往歴などの「禁忌事項」を確実に確認し、施術のリスクや内容について十分な説明(インフォームド・コンセント)を行い、必ず「同意書」を取得します。また、お客様から得た情報はすべて「個人情報」です。漏洩や目的外利用は絶対に許されません。これらの徹底した管理体制が、プロのサロンとしての信頼を築きます。
イレブンからのアドバイスカウンセリングは「施術の一部」ではなく「施術の9割」を占める最重要プロセスです。ここで築いた信頼関係が、そのままリピート率に直結します。技術に自信がある方ほど、この「聴く技術」を磨くことが成功の鍵です。
「カウンセリング」は、初回来店時だけではありません。お客様との関係性が続く限り、施術の「前(プレ)」「最中(イン)」「後(アフター)」のすべてに存在します。この一連の流れを最適化することで、お客様の満足度と信頼は雪だるま式に高まり、長期的なファン化が実現します。
カウンセリングの理想的な3ステップ
理想のカウンセリングは、お客様が来店する「前」から始まっています。Web予約時などに「事前アンケート(オンライン問診)」を送付し、悩みや来店動機をあらかじめ把握します。これにより、来店時のヒアリング時間を短縮でき、より深い部分から話を始められます。また、メールやLINEで「当サロンは〇〇の専門です」と伝えることで、お客様の「期待値のすり合わせ」も可能になります。このひと手間が、当日のスムーズな流れを生み出します。
のカウンセリングは「設計図作り」の本番です。事前アンケートに基づき、お客様が「本当に解決したい悩み」は何か、オープンクエスチョン(「どうなりたいですか?」)で「深掘り」します。そして「いつまでに(例:結婚式までに)」「どうなっていたいか」という具体的な「ゴール設定」を共有します。同時に、アレルギーや服薬歴などの「禁忌チェック」を厳格に行い、安全を担保します。
施術後(アフター)は、カウンセリングの「答え合わせ」と「未来への設計」の時間です。まず、鏡や写真を見ながら「ここがこう変わりましたね」と施術の「結果を共有」し、感動を高めます。その上で「この状態を維持・向上させるため」に最適な「次回予約」と「ホームケア」を提案します。施術で満足度が最高潮に達しているこのタイミングこそが、最もスムーズに「継続(クロージング)」に繋がるゴールデンタイムなのです。



カウンセリングの流れを「3つのステップ」で捉えることで、業務が標準化されます。特に「プレ(事前)」を充実させると、来店時の「イン」で焦る必要がなくなり、提案の質(=成約率)が劇的に向上します。
初回のカウンセリングは、サロンの「診断力」が問われる場です。聞き漏らしがあると、最適な提案ができず、信頼も得られません。お客様の「過去(悩み・既往歴)」「現在(生活習慣)」「未来(ゴール)」を把握するため、以下のチェックリストを網羅した問診票を必ず準備しましょう。
まず、お客様の属性(基本情報)と「なぜ今日ここに来たのか(来店目的)」を明確にします。次に重要なのが「いつまでに」という期限の有無です。「3ヶ月後の結婚式までに痩せたい」という方と「1年かけて体質改善したい」という方では、提案するプランが全く異なります。同時に「予算感」や「希望の来店頻度」も伺うことで、お客様のニーズから外れた「無理な提案」を防ぎ、現実的なゴール設計が可能になります。
これは「安全」に関わる最重要項目です。お客様の健康状態を把握せず施術を行うことは、医療事故にも繋がりかねない危険な行為です。最低限、以下の項目は必ず書面と口頭で二重に確認しましょう。
お客様の悩み(例:ニキビ)は、その方の「生活習慣」の結果として現れていることがほとんどです。肌質や体質(例:乾燥肌、冷え性)だけでなく、睡眠時間、食事の内容(外食や水分の量)、運動習慣、ストレスレベルなどをヒアリングします。これらの「根本原因」にアプローチする提案(例:食事指導)こそが、他店との差別化に繋がります。サロンケアと生活習慣の両輪で結果を出すという姿勢を伝えましょう。



このチェックリストは、お客様を「審査」するためではなく「最高の結果を安全に提供するため」に存在します。「プロとして、あなたを深く知りたい」という誠実な姿勢として、ヒアリングの重要性をお客様にもお伝えしましょう。
カウンセリングは「何を話すか」よりも「いかに聴くか」が重要です。お客様が安心して本音を話せる「心理的安全」な空間を作り出す会話の技法(スキル)があります。これらの技法を身につけることで、お客様自身も気づいていなかった「真の悩み」を引き出すことができます。
お客様が話し始める際は、絶対に遮らず、頷きや相槌を打ちながら「共感的傾聴」の姿勢を保ちます。「そうだったんですね」「大変でしたね」と、お客様の感情に寄り添うことが信頼の第一歩です。「はい・いいえ」で答えられるクローズドクエスチョン(「乾燥しますか?」)を減らし、「5W1H」を使ったオープンクエスチョン(「いつ、どんな時に乾燥を感じますか?」)を多用しましょう。これにより、お客様は自分の悩みを具体的に「言語化」できるようになります。
お客様が長く話してくださった後は、必ず「要約」と「確認」を行います。「〇〇様のお悩みは、つまり△△ということでお間違いないでしょうか?」と、お客様の言葉を「言い換え」て確認するのです。このプロセスには2つのメリットがあります。1つは、お客様が「この人はちゃんと私の話を理解してくれた」と安心すること。もう1つは、エステティシャン側の「解釈のズレ」をゼロにすることです。この「認識合わせ」こそが、提案ミスマッチを防ぐ鍵です。
お客様の「悩み」は、しばしば主観的なものです。カウンセリングでは、それを「客観的な事実」に変換する「可視化」が極めて重要です。鏡を見ながら「気になっているのは、この部分ですね」と指差して「変化の起点(ビフォー)」を共有します。肌診断機や体組成計での「計測」、あるいは「写真撮影」も強力な可視化ツールです。この「現在の立ち位置」を共有して初めて、お客様は「変わりたい」という意欲を具体的に持つことができます。



「可視化」は、お客様のモチベーション維持にも最強のツールです。特に写真は「変化の起点」として必ず撮影し、アフターカウンセリングで比較できるようにしましょう。「こんなに変わった!」という視覚的な感動が、次の契約に繋がります。
カウンセリングのゴールは「合意形成(クロージング)」です。しかし、多くのサロンが「押し売り」と誤解されることを恐れ、十分な提案ができていません。成約率が高いサロンは「お客様が自ら選びたくなる」提案の設計図を持っています。お客様のメリットを最大化する提案こそが、真の信頼関係を築きます。
お客様のゴール(目標)と現在地(悩み)が明確になったら、そこへ至る「地図(プラン)」を設計します。重要なのは、サロンケア(通い方)とホームケアの「最適比率」を提示することです。「週1回のサロンケアと、毎日のこの美容液(ホームケア)を組み合わせれば、3ヶ月でゴールに到達できます」と具体的に示します。サロンケア単体ではなく、トータルパッケージで提案することが、プロとしての「診断力」を示すことになります。
価格提示は、お客様が最も緊張する瞬間です。ここで「松竹梅」の3つのプラン(例:ライト/スタンダード/集中ケア)を提示し、お客様に「選択肢」を与えるのが王道です。スタンダードプラン(竹)を本命とし、その価値(結果・期間)を丁寧に説明します。比較軸は「安さ」ではなく「投資対効果(総コスト)」です。「結果的に、自己流で時間とお金を無駄にするより、この期間で集中投資する方がお得です」と、価値を伝えることが重要です。
「押し売り」をせず、お客様の「断り文句」に上品に対応するスキルは必須です。
承知いたしました。
ご提示いただいた「お客様の断り文句への切り返しトーク例」について、なぜその対応(OK対応)が有効なのか、お客様の心理背景や対応の目的まで含めた、より詳細で分かりやすいテーブルを作成します。
これは、単なるトークスクリプトではなく、お客様の信頼を勝ち取るための「思考法」をまとめたものです。
| お客様の断り文句(シチュエーション) | お客様の深層心理(なぜ、そう言うのか?) | やってはいけないNG対応(なぜダメか?) | 推奨OK対応(トーク例) | OK対応のポイント(目的・理由) |
| 「ちょっと、検討します…」 | ・価格が高い ・効果に確信が持てない ・他店と比較したい ・今、決断したくない | 「今決めないと損ですよ!」 (=押し売り) お客様の迷いを無視した「売り手の都合」を押し付けると、お客様は強い警戒心を抱き、二度と来店しなくなります。 | 「もちろんどちら。差し支えなければ、どの点で一番迷われていますか? (例:価格、期間、効果など)」 | 目的:不安の「ボトルネック」を特定する 1. まずお客様の「検討したい」という気持ちを**受け入れ(共感)します。 2. その上で、判断を迷わせている「最後の不安」**が何かを優しくヒアリングします。 3. 「価格」が理由なら予算に合わせたプランを、「効果」が不安なら実績(写真)を見せるなど、不安を解消する「再提案」が可能になります。 |
|---|---|---|---|---|
| 「予算的に厳しいかな…」 | ・本当に価格が高い ・価格に見合う価値をまだ感じていない | 「そうですか…(諦める)」 (=提案放棄) エステティシャン側が諦めてしまうと、お客様は「自分はこのサロンにとって客ではなかった」と感じ、関係性自体が切れてしまいます。 | 「でしたら、まずは月5千円のホームケア(物販)から始めて、効果をご自宅で実感してみませんか?」 | 目的:関係性を維持し「スモールステップ」を提案する 1. 高額なコース(本命)が無理でも、お客様との関係性を切らないことが最優先です。 2. お客様が「YES」と言いやすい**「次善の策(小さな提案)」**を提示します。 3. ホームケア等で効果を実感していただければ、将来的に予算ができた時に、必ず本命コースの顧客として戻ってきていただけます。 |



「検討します」は、断り文句ではなく「最後の不安が残っているサイン」です。深追い(クロージング)するのではなく、その「不安」は何かを優しくヒアリング(再カウンセリング)するチャンスだと捉えましょう。その不安を解消できれば、成約率は格段に上がります。
理論はわかっていても、いざお客様を目の前にすると言葉に詰まってしまうものです。ここでは、弊社が推奨する「黄金トークスクリプト」の一部をご紹介します。これを「型」として覚え、あとはあなたのサロンの「言葉」でアレンジして、あなただけの最強のカウンセリングマニュアルを完成させてください。
「〇〇様、本日は数あるサロンの中から当店をお選びいただき、ありがとうございます。担当する△△です。(笑顔で)今日はとても暑かった(寒かった)ですね。こちらにいらっしゃるまで、迷われませんでしたか?」 最初の目的は、お客様の緊張を解きほぐすことです。施術や悩みとは関係のない「天候」や「道順」の話(アイスブレイク)から入り、お客様がリラックスして話し始められる雰囲気作りを最優先します。
「本日は、お肌(お体)のどのような点が一番気になっていらっしゃいますか?(オープンクエスチョン)」→「(シミ、と返答)そのシミは、いつ頃から気になり始めましたか?」→「(半年前から、と返答)何かきっかけ(例:日焼け、ストレス)は思い当たりますか?」→「そのシミのために、今までご自身で何かケアはされてきましたか?」 このように、お客様の答え(悩み)を起点に、徐々に過去に遡って「原因」と「経緯」を深掘りしていく質問が、根本解決への最短ルートです。
「本日ご提案したいのは〇〇という施術です。これは(機器名)を使い、お肌の奥(真皮層)に熱を加えてコラーゲン生成を促すものです。(メリット)痛みはほとんどなく、温かいマッサージのような感覚です。(体感)ただし、まれに赤みが出ることがありますが、数時間で引きます。(リスク)この内容で進めさせていただいてもよろしいでしょうか?(確認)」 必ず「メリット」「体感」「リスク」「確認」をワンセットで説明します。このプロセスが、お客様の不安を「安心」に変えます。
「本日の施術、お疲れ様でした。(鏡を見せながら)特に気になっていたフェイスライン、すごくスッキリしましたね!(結果共有)」→「この良い状態を定着させ、さらに引き上げるために、次回のベストタイミングは2週間後です。(提案)」→「来月の〇日あたりで、ご都合の良い日はございますか?(具体的な選択肢)」 施術後の感動が冷めないうちに「プロとしての最適な次の一手」を、自信を持って提案することが、自然な次回予約(合意形成)に繋がります。



スクリプトは「丸暗記」するものではなく、カウンセリングの「流れ(型)」を体に染み込ませるためのものです。型さえマスターすれば、あとはお客様の反応に合わせて、あなた自身の「心からの言葉」で対応できるようになります。
どれだけ素晴らしいカウンセリングを行っても「万が一」のトラブルの可能性はゼロにできません。重要なのは、トラブルを「未然に防ぐ」仕組みと、万が一「起きてしまった」際の初期対応フローを、あらかじめ完璧に準備しておくことです。この「守り」の堅さが、サロンの信頼を支えます。
トラブル予防の三種の神器は「パッチテスト」「禁忌対応」「同意書」です。初めて使用する化粧品やピーリング剤は、必ず「パッチテスト」を行い、アレルギー反応が出ないか確認します。カウンセリングでは、アレルギーや服薬歴などの「禁忌事項」を徹底的に確認します。そして、施術のリスクや内容を説明した上で「同意書」に署名をいただく。この3点を省略することは、サロン経営において最大のリスクです。
万が一、お客様からクレーム(例:赤みが引かない)の連絡があった場合、最も重要なのは「初動」です。
万が一のクレーム対応フロー
カウンセリングで得たお客様の悩みや個人情報は、サロンの「最重要機密」です。法律(個人情報保護法)に基づき、鍵のかかる場所やパスワードで厳重に「管理」し、スタッフには「守秘義務」を徹底させます。また、ビフォーアフターなどの「写真」は、お客様の許可なくSNSなどに利用することは絶対に許されません。掲載する場合は、必ず「写真利用専用の同意書」を別途取得し、トラブルの火種を完全に消しておきましょう。



リスクマネジメントは「お客様の信頼を守る」ためのものです。同意書や禁忌確認を「面倒な作業」と捉えず、お客様に安心していただくための「プロの仕事」として、誰よりも丁寧に実行しましょう。
施術後のアフターカウンセリングは、お客様の満足度を「感動」に高め、次回の来店に繋げるための「クライマックス」です。施術で終わり、ではありません。お客様が「またこの人に会いたい」と思うような、次回のゴールを共有し、お客様の日常(ホームケア)に寄り添う設計が重要です。
施術後は、ビフォーアフター写真や鏡を使い、お客様が実感している「変化」を、プロの視点から「言語化」します。「フェイスラインがこれだけ引き締まったのは、〇〇(機器名)で深部の筋肉にアプローチできたからです」と理由を説明します。その上で「今日はここまで変わりましたが、次回はさらに〇〇を目指しましょう」と、お客様のモチベーションが高まっているうちに「次回のゴール」を再設定します。
サロンケアの効果を最大限に高めるのが「ホームケア」です。しかし、一度に多くのことを伝えてもお客様は実行できません。「今日から頑張ってほしいことは、たった2つだけです」と「優先順位」を明確にします。例えば「まずは保湿美容液を朝晩使うこと」など、具体的な「頻度」と「やり方(自己評価法)」を指導します。物販は「売る」のではなく、結果を出すための「指導」の一環として行いましょう。
サロンを出た後も、お客様との「関係性」は続きます。これが「来店間コミュニケーション」です。施術の翌日に「お肌の調子はいかがですか?」とLINEやメールで「フォロー」するだけで、お客様の安心感と満足度は劇的に高まります。また、お客様の悩みに合わせた美容情報を定期的に配信することで、サロンのことを忘れさせず、次回の来店までモチベーションを維持する「架け橋」となります。



アフターフォロー(LINEなど)は、単なる「営業」や「作業」ではありません。お客様の「日常」に寄り添う「パートナー」としての役割です。この来店間のコミュニケーションが、お客様の「解約」を防ぎ、LTV(顧客生涯価値)を最大化させます。
お客様が「本音」を話してくれるかどうかは、カウンセリングの「中身」だけでなく、それをとりまく「環境」や「ツール」によっても大きく左右されます。プライバシーが守られ、リラックスできる「空間」と、カウンセリングを効率化・高度化する「道具」を最適化することも、プロの仕事です。
カウンセリングは、必ず「個室」または他の人の声が聞こえない「半個室」で行い、プライバシーを守ります。お客様との「座る位置」は、真正面(対立)ではなく、90度か斜め(協調)が理想です。近すぎず遠すぎない「距離感」、リラックスできる「照明(暖色系)」、落ち着いた「BGM(音)」、心地よい「香り」など、五感すべてに配慮した空間演出が、お客様の心の扉を開きます。
カウンセリングの質は「情報管理」の質でもあります。手書きの紙カルテは、過去の履歴を探すのに時間がかかり、情報共有も困難です。「電子カルテ」や「CRM(顧客管理システム)」を導入すれば、お客様の情報を一元管理でき、前回の会話内容や購入履歴を瞬時に呼び出せます。「オンライン問診」と連携させれば、来店時の記入の手間も省け、カウンセリング業務は飛躍的に効率化します。
カウンセリングの「説得力」を高めるのが「計測機器」です。お客様の主観(「なんとなくたるみが気になる」)を、客観的な「データ」に変えることができます。「肌診断機」で水分・油分を数値化したり、「体組成計」で筋肉・脂肪量を計測したり、「画像記録(ビフォーアフター)」を時系列で比較したり。これらの「客観的事実」は、高単価メニューや物販の提案において、どんなトークよりも強力な武器となります。



ツール(電子カルテや計測機器)は、単なる「効率化」のためだけにあるのではありません。お客様に「このサロンは、私のことをデータでしっかり管理・分析してくれる」という「専門性」と「信頼感」を与えるための「投資」です。
お客様のニーズは一人ひとり異なります。「価格」を最重視する方もいれば「結果」のためなら高額でも構わない方もいます。カウンセリングの「型」を持ちつつも、お客様のタイプやニーズに合わせて、話し方や提案の「順番」を柔軟に変える「対応力」こそが、真のプロフェッショナルです。
| お客様タイプ | 見極めのサイン(言葉・行動) | お客様の深層心理(何を求めているか?) | やってはいけないNG対応(なぜダメか?) | 推奨OKアプローチ(トーク例・提案) | OKアプローチの目的(なぜ、それが効くか?) |
| 1. 価格重視タイプ | ・「一番安いのはどれですか?」 ・「総額でいくらですか?」 ・「他店と比較したい」 | ・損をしたくない(コスパ重視) ・価格の「透明性」を求めている ・予算内で、できるだけ良い結果が欲しい | 「一番安いのはこれです」とだけ答える (NG理由) 安さだけで選ばれると、リピートに繋がらない「クーポン客」になってしまいます。 | 「1回あたりの価格が最もお得になるのは、こちらの回数券です」 「予算内で最大の効果を出すため、サロンケアと〇〇(ホームケア)を組み合わせるプランはいかがですか?」 | 目的:「安さ」を「賢さ(お得感)」に転換する 「安い」ではなく「費用対効果(コスパ)が高い」ことを示します。「1回あたりの単価」や「総額で得られる価値」を強調し、お客様に「賢い選択をした」と満足してもらうことがゴールです。 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2. 結果追求タイプ | ・「高くても良いから、絶対変わりたい」 ・「一番効果が出るのはどれですか?」 ・「色々試したけどダメだった」 | ・結果が全て(コストより効果) ・本気で悩んでおり、モチベーションが非常に高い ・「プロの提案」を求めている | 自信なさげに「お試しの〇〇コースから…」と提案する (NG理由) お客様の「本気度」に応えられないと、プロとして信頼されず「このサロンはダメだ」と見限られてしまいます。 | 「〇〇様の『本気』に応えるなら、当サロンで最強の組み合わせである『最新機器A』と『高濃度美容液B』の集中プランです」 | 目的:お客様の「本気度」に「最高品質」で応える このタイプのお客様は、中途半端な提案を嫌います。サロンが持つ「最上位のプラン」を、自信を持って堂々と提案することが、そのまま信頼感に繋がります。「あなただから、このプランを提案します」という特別感が鍵です。 |
| 3. 短期集中タイプ | ・「結婚式までに」 ・「夏までに」 ・「来月の同窓会に間に合わせたい」 | ・明確な「ゴール(期限)」がある ・結果と同じくらい「スケジュール」を重視する ・「本当に間に合うか」が不安 | 「うーん、やってみないと何とも…」と曖昧に濁す (NG理由) お客様の最大の不安である「期限」に寄り添えないと、不信感を与えます。「間に合わないかも」と思われた瞬間に失注します。 | 「お任せください。結婚式が〇月〇日なら、そこから逆算して、計6回の施術日を今ここで押さえましょう」 「〇〇様専属のコーチとして、当日まで一緒に頑張ります」 | 目的:「スケジュール」を確定させ「伴走者」になる 技術的な提案よりも先に、まず「間に合わせるためのスケジュール」を確定させ、お客様を安心させます。期限まで一緒に戦う「パートナー」としての姿勢(伴走)を見せることが、絶大な信頼を生みます。 |
| 4. 初めてで不安タイプ | ・「痛いですか?」 ・「機器って安全なんですか?」 ・「私、肌がすごく弱くて…」 ・質問が多い | ・「変わりたい」気持ちより「失敗したくない」不安が勝っている ・「安全性」「低刺激」が最優先事項 | 「大丈夫ですよ、皆さんやってますから」と不安を軽視する (NG理由) 不安を一般論で片付けると、お客様は「この人は私の不安を理解してくれない」と感じ、心を閉ざしてしまいます。 | 「ご不安ですよね。まずご説明します。この機器は〇〇という安全機能があり…」 「よろしければ、まず腕でパッチテストをしてみますか?」 「一番弱いレベルから試して、〇〇様の感覚を最優先します」 | 目的:「結果」より先に「絶対的な安全・安心」を提供する まずはお客様の不安に「共感」し、それを解消するための「証拠(安全機能、実績)」を丁寧に説明します。「いつでも中断できる」というお客様主導の選択肢を提示することで、安心感が生まれ、初めて施術に前向きになれます。 |
お客様のタイプを見極め、アプローチを変えます。「価格重視」の方には、総額を抑えつつ結果を出す「回数券」や「ホームケア併用プラン」を。「短期集中」の方(例:ブライダル)には、期限から逆算した「高密度なプラン」を。「結果追求」の方には、高額でも「最新機器」と「高濃度美容液」を組み合わせた最上位プランを。「初めてで不安」な方には、何よりも「安全説明」と「低刺激」を優先します。
「とにかく時間がない」という多忙なビジネスパーソンや主婦層には、効率性をアピールします。「このプランなら、来店は月1回・60分で済みます。あとはご自宅での〇〇(ホームケア)だけです」と、「時短」と「結果」を両立できる設計を提案します。予約の取りやすさや、オンラインでの簡単なフォローアップも、この層には非常に魅力的に映ります。お客様の「時間コスト」に寄り添う姿勢が重要です。
「痛いのは嫌」「機器は怖い」というお客様には、何よりも「安心感」の提供を優先します。説明の手順は、
①まず「絶対に無理はしない」というサロンのスタンスを伝えます。
②使用する機器の「安全性データ」や「実績」を見せます。
③「最初は一番弱いレベルから試して、〇〇様の感覚を確認しながら進めます」
と、お客様主導で進めることを約束します。この丁寧なプロセスが、不安を信頼に変えます。



お客様のタイプを見極める最強の質問は「本日、ご契約を決めるとして、何か一つだけ解消したい不安があるとしたら何ですか?」と(信頼関係ができた上で)聞くことです。ここで「価格」「痛み」「期間」など、お客様の本音が必ず出てきます。
カウンセリングは「感覚」や「経験」だけで行うものではありません。「科学」であり「技術」です。だからこそ、その「質」を客観的な「数字(KPI)」で測定し、改善し続ける(PDCA)必要があります。数字は嘘をつきません。データに基づいた改善こそが、サロン全体のカウンセリングレベルを引き上げます。
| KPI名称 | 計算方法(例) | この数字が示すもの(重要性) | この数字が「低い」場合の原因(例) | 改善のための具体的なアクション(例) |
| 1. 初回成約率 | コース契約数 ÷ 初回体験客数 (例:5契約 ÷ 10体験=50%) | カウンセリングの「提案力」 お客様の悩みを正確に引き出し、その解決策として「このサロンで継続したい」と思わせる魅力的な提案ができているか。 | ・お客様の「真の悩み」を引き出せていない ・提案が「押し売り」に感じさせている ・価格(松竹梅)の選択肢が悪い | ・傾聴と深掘りの徹底(オープンクエスチョン活用) ・ビフォーアフター写真で「結果」を可視化する ・「検討します」と言われた時の切り返しトークを準備する |
|---|---|---|---|---|
| 2. 次回予約率 | 次回予約獲得数 ÷ 総施術客数 (例:80予約 ÷ 100施術=80%) | 施術と体験への「満足度」 施術の結果、およびアフターカウンセリングでの「感動」が、次の来店意欲に繋がっているか。 | ・施術結果への「感動」が薄い ・アフターカウンセリングでの「次回来店のメリット」が伝わっていない ・単に提案を忘れている | ・施術後に「結果の言語化」(ビフォーアフター比較)を徹底する ・「この状態を維持するため、最適な次回来店日は〇週間後です」とプロとして提案する ・退店時のトークフローをマニュアル化する |
| 3. 回数券化率 (=リピート化率) | 回数券契約数 ÷ 都度払い客数 (例:3契約 ÷ 10都度払い=30%) | 「継続」への信頼度 「このサロンなら、お金と時間を投資して通い続けたい」という、中長期的な信頼関係が築けているか。 | ・都度払いとの「価格差(お得感)」が魅力に欠ける ・2回目、3回目の来店時の感動が薄れている ・高額な回数券しかなく、心理的ハードルが高い | ・回数券の「有効期限」や「特典」を魅力的に設計する ・「3回お試しコース」など、中間のステップを用意する ・お客様の来店サイクルをデータで管理し、最適なタイミングで提案する |
| 4. LTV (顧客生涯価値) | 総売上 ÷ 総顧客数 (例:500万円 ÷ 100人=5万円) | サロンへの「最終的な愛着度」 回数券、物販、別メニューの追加契約など、お客様がどれだけ長く、深くサロンを愛してくれているか。 | ・回数券が終了したら「卒業(離脱)」してしまう ・物販(ホームケア)の提案ができていない ・お客様の「次の悩み」を引き出せていない | ・回数券終了客向けの「メンテナンスプラン」を用意する ・施術効果を持続させる物販(ホームケア)をセットで提案する ・LINEなどで来店間のコミュニケーション**を取り、関係性を維持する |
カウンセリングの「質」を測る4つの重要KPIです。①「初回成約率」は、体験に来たお客様のうち何割がコース契約したか。②「次回予約率」は、施術後のお客様が次の予約を取ったか。③「回数券化率」は、都度払いから回数券に移行した割合。④「LTV(顧客生涯価値)」は、最終的な顧客単価。これらの数字を毎月定点観測し、どこにボトルネックがあるのか(例:初回成約率は高いがLTVが低い)を分析します。
数字が下がっている原因を特定するには、実際のカウンセリングを「振り返る」しかありません。
▼ カウンセリング改善PDCAサイクル
自分のカウンセリングを「録音して聞く」のは、自分の粗が見えるようで、最初はとても恥ずかしく勇気がいることです。しかし、これを実行できたオーナー様は、例外なく全員、成約率が劇的に改善しています。最も低コストで、最も効果のある「自己投資」だと断言できます。
スタッフを雇う場合、サロンの「カウンセリング品質」を安定させるには、スタッフ間の「ブレ」をなくすことが不可欠です。そのために「カウンセリングマニュアル(台本)」と「評価シート」を整備し、全員が同じ「型」でカウンセリングできるまで「教育」します。担当者によって言うことが違う、というのはサロンにとって最大のマイナスです。統一された高い品質こそが、ブランドの信頼となります。



KPI(数字)は、あなたを「評価」するためではなく、サロンを「改善」するために見るものです。数字が悪い時は、落ち込むのではなく「伸びしろが見つかった!」と捉えるマインドセットが、経営者には不可欠です。
カウンセリングやサロンについて、お客様から「事前に」聞かれそうな質問を、あらかじめHPや予約ページに「FAQ」として掲載しておきましょう。これにより、お客様は来店前に「不安」を解消でき、サロン側は当日の説明コストを下げることができます。これは、お客様への「先回りした配慮」です。
「初回カウンセリングの所要時間は、お着替えなど含め約90分です」「特に持ち物は不要ですが、お薬手帳があればお持ちください」「メイクはしたままご来店いただいて構いません。クレンジングから行います」「服装は自由です。施術時はガウンにお着替えいただきます」「(写真撮影は)施術効果の確認のため、お写真を撮らせていただきますが、ご本人様の許可なく外部に公開することはありません」 このように、具体的な回答を明記します。
「敏感肌の方専用の低刺激メニューもございます。カウンセリングにて詳細をお伺いします」「持病や服薬中の方は、施術内容によっては主治医の許可が必要な場合がございます。安全のため、必ず事前にお申し出ください」「(例)〇〇(特定の機器)は、ペースメーカーや金属が体内にある方は受けられません」 安全に関わることは、特に明確に記載し、お客様の自己判断を防ぎます。
「当サロンでは、お客様のお悩みに合わせた最適なプランをご提案しますが、無理な勧誘は一切行いません。ご予算やご希望に合わせて、お客様ご自身でお選びいただきます」「ご購入いただいた化粧品や回数券の返品・解約については、特定商取引法に基づき適切に対応いたします。詳細は契約書をご確認ください」「キャンセルは前日の18時までにお願いしております」 お客様が最も不安に感じる「お金」と「契約」に関する質問には、誠実かつ毅然と回答します。



FAQは、お客様の「不安」を「安心」に変える重要なコンテンツです。お客様から実際に受けた質問はすべてメモしておき、FAQを随時更新していきましょう。それが「お客様の声に耳を傾けるサロン」という信頼に繋がります。
ここまでお読みいただいた方へ、弊社(株)イレブンが実際のコンサルティングで使用している「初回カウンセリング資料一式」のテンプレートを無料でプレゼントします。これらを活用し、あなたのサロンのカウンセリング品質を今日からアップデートしてください。
▼ ダウンロード資料一覧
本記事の「初回で必ず聞くべき項目チェックリスト」を網羅した、プロ仕様の問診票テンプレートです。お客様の健康状態、悩み、生活習慣を正確に把握するために最適化されています。これをベースに、あなたのサロンのコンセプト(例:痩身特化なら食事記録欄を増やす)に合わせてカスタマイズしてご使用ください。
施術のリスク、禁忌事項、キャンセルポリシーなどを網羅した「基本同意書」と、ビフォーアフター写真の「写真利用(SNS掲載等)に関する同意書」のテンプレートです。お客様とサロン、双方を守るために不可欠な書類です。必ず、導入する機器や施術内容のリスクに合わせて、弁護士等の専門家にご相談の上、内容を修正・確定させてください。
初回カウンセリングの「流れ」と「必須確認項目」を一枚にまとめた、エステティシャン用のチェックリストです。これに沿って進めるだけで、ヒアリング漏れや提案漏れを防ぎ、カウンセリングの「型」を習得することができます。新人教育や、日々のオペレーション確認(SOP)にもご活用いただけます。



これらのテンプレートは「たたき台」です。ダウンロードして終わりではなく、ご自身のサロンの「コンセプト」に合わせてカスタマイズしてご活用ください。特に同意書は、導入する機器のリスクに合わせて必ず修正が必要です。
「勝てるカウンセリング」とは、お客様が「私のことを、私以上に理解してくれた」と感じ、安心して未来を委ねてくれるプロセスそのものです。技術やトークスクリプトを磨くと同時に、お客様の「安全」と「信頼」を最優先する「基本スタンス」を、今一度見直してみてください。
この記事を読んで「勉強になった」で終わらせず、今日から「1つでも実行する」ことが、あなたのサロンを変える第一歩です。



カウンセリングに「正解」はありませんが「必勝の型」は存在します。まずはこの記事で紹介した「型」を徹底的に真似る(TTP)ことから始めてみてください。あなたのサロンの成約率が劇的に変わることを、私たちは知っています。