この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。

この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。
エステサロン開業の成否は「物件選び」で8割決まる、と言っても過言ではありません。特に女性オーナー様にとっては、集客だけでなく「安全性」や「働きやすさ」も重要な判断軸です。全国500サロンを支援してきた(株)イレブンが、失敗しない物件選びの全ノウハウを、女性目線で徹底解説します。
物件は単なる「場所」ではなく、集客とリピートを生む「装置」です。なぜなら、立地はお客様の「通いやすさ」に、間取りは「快適な体験」に直結するからです。例えば、駅から遠く分かりにくい物件は、それだけでリピート率が下がります。物件選びこそ、開業準備の最重要タスクと位置づけ、慎重に進める必要があります。
物件選びで失敗しないためには、「立地」「間取り」「契約条件」の3軸で総合的に判断することが不可欠です。立地が良くても間取りが悪ければお客様は快適に過ごせず、間取りが良くても契約条件(家賃、原状回復)が悪ければ経営を圧迫します。例えば、駅近でも騒音がひどい、間取りは良いが電力容量が足りない、など。この3つのバランスが取れた物件こそが「勝ち物件」です。
女性のお客様がサロンを選ぶ際、「安心感」と「通いやすさ」は技術力と同じくらい重要視されます。夜道が暗い、共用部が汚い、といったマイナス要素は、リピートを妨げる大きな要因です。逆に、駅から近く明るい道で通える、プライバシーが守られた空間である、といったプラス要素は、お客様の生涯価値(LTV)を高めます。物件選びは、お客様の「通い続けたい」気持ちを育む土台作りなのです。
私たちが支援してきた成功サロンの「勝ち物件」には共通点があります。それは、必ずしも「駅近1階」ではないということ。むしろ、2階以上でも「隠れ家感」があり、内装で「非日常」を演出し、お客様との「深い信頼関係」を築いているサロンが多く存在します。物件のハード面だけでなく、それを活かすソフト面(接客、技術)との掛け算こそが、勝ち物件の真髄と言えるでしょう。
女性オーナー様ご自身、そしてお客様が「心から安心して過ごせるか」は、物件選びの最重要チェックポイントです。特に夜間の安全性や共用部の清潔感は、写真や図面だけでは分かりません。この「安心・安全・清潔感」への投資こそが、信頼の基盤となります。
夜間に営業する場合、お客様(そしてご自身)が安全に帰宅できるかは死活問題です。以下のチェックリストを手に、必ず夜間に物件周辺をご自身の足で歩いて確認してください。
お客様が「夜一人で歩いても怖くない」と感じる環境を選びましょう。
お客様は、サロンのドアを開ける「前」から評価を始めています。マンションの一室を借りる場合、エントランス、エレベーター、廊下、共用トイレなどの「共用部」の清潔感が、サロン全体の印象を左右します。管理が行き届かず薄暗い、異臭がする、といった物件は、どんなにサロン内を綺麗にしても台無しです。共用部の管理状況は、その物件の「質」を表す鏡だと心得ましょう。
お客様が最も気にするのが「プライバシー」です。待合スペースで他のお客様と顔を合わせたくない、施術中の会話が外に漏れないか、といった不安を解消する間取りが理想です。例えば、待合と施術室が完全に分離されているか、壁の「遮音性」は十分か。特にマンションの一室では、隣室への音漏れにも注意が必要です。お客様が心からリラックスできる「守られた空間」を提供できるか、動線と構造を細かくチェックしてください。
イレブンからのアドバイス女性オーナー様にとって「安全性」は、集客力以上に重要な物件選定の軸です。お客様の安全はもちろん、オーナー様ご自身の安全が確保されてこそ、長く安心して経営ができます。家賃が安くても、夜道が暗かったり、共用部が管理されていなかったりする物件は絶対に避けてください。その「安心感」こそが、サロンの信頼に直結します。
理想的な立地とは、「わざわざ 찾아来てくれるお客様(目的来店)」と、「通りがかりで気になってくれるお客様(偶然発見)」の両方を獲得できる場所です。駅からの距離だけでなく、看板の視認性や周辺店舗との相乗効果も考慮に入れることで、広告費に頼らない「自然な集客」が生まれる立地を見つけることができます。
一般的に「駅徒歩5分以内」が理想とされますが、重要なのは「体感距離」です。坂道が多い、信号待ちが長い、夜道が暗い場合は、5分でも遠く感じます。逆に、アーケードを通れる、お洒落な店が並ぶ道なら、7分でも苦になりません。特にヒールで移動する女性客の視点に立ち、「ストレスなく歩けるか」を実際に歩いて確認しましょう。バス停からのアクセスも忘れずにチェックしてください。
看板(サイン)は、サロンの存在を知らせる重要な広告塔です。「視認性」、つまり「見つけやすさ」が鍵となります。人通りが多い交差点の角、横断歩道の正面、バス停の目の前などは、自然と人の視線が集まる「黄金パターン」です。ただし、看板の設置場所やサイズは、物件の規約や屋外広告物条例で厳しく制限されます。契約前に「希望の看板が出せるか」を必ず確認してください。
ターゲット層が集まる「場所」の近くに出店するのも有効な戦略です。例えば、美容に関心が高い女性が集まる「ドラッグストア」「ヨガスタジオ」「美容室」の近くは、相乗効果が期待できます。お客様が「買い物のついでに」「ヨガの帰りに」立ち寄れる立地は、来店ハードルを下げ、リピートにも繋がります。ただし、直近に強力な「競合エステサロン」がないかは、必ず事前に調査してください。
全てのターゲットに響く「完璧な立地」は存在しません。ご自身のサロンが「誰に」来てほしいのか、ターゲット層のライフスタイルに合わせて、最適なロケーションを選ぶことが重要です。駅近が良いのか、駐車場が必要なのか。静かな環境か、賑やかな場所か。ターゲットを絞り込むことで、物件選びの軸が明確になります。
仕事帰りの来店が多い20〜30代OL層がターゲットなら、「駅近(徒歩5分圏内)」と「夜間の安全性」は絶対条件です。さらに、近くにお洒落なカフェや話題のショップなど「インスタ映え」するスポットがあると、来店前後の楽しみが増え、集客のフックにもなります。主要路線からのアクセスが良いターミナル駅周辺や、オフィス街に近いエリアが狙い目です。
子育て中のママ層がターゲットなら、駅近よりも「駐車場(または提携駐車場)」の有無が重要になります。また、入口に段差がなく「ベビーカー」でそのまま入れるか、キッズスペースを設けられるか、といった「子連れフレンドリー」な設備・導線も必須。近くに保育園や幼稚園、人気の公園などがあると、送迎ついでに立ち寄りやすく、口コミでの広がりも期待できます。
高単価メニューを提供する富裕層向けサロンなら、駅近の喧騒よりも「高級住宅地の静かな環境」が好まれます。看板は控えめにし、「完全個室」でプライバシーを徹底的に守ることが最重要。お客様が車で来店されることを想定し、「駐車場」または「車寄せ」スペースがあると理想的です。上質なサービスに見合う、エクスクルーシブな空間を提供できる物件を選びましょう。
物件タイプは、初期費用、運営コスト、そしてブランディングに大きく影響します。隠れ家的な「マンション一室」、認知度を高めやすい「路面店」、低リスクで始められる「シェアサロン」。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身のコンセプトと資金計画に最も適したタイプを選ぶことが重要です。
| 物件タイプ | 初期費用目安 | 運営コスト | メリット | デメリット・注意点 |
| マンション一室 | 中程度 (数十万〜数百万円) ・保証金、礼金 ・内装費(限定的) ・美容機器、備品 | 低い ・比較的安価な家賃 ・共益費 | ・隠れ家感を演出しやすい ・低コストで運営可能 ・プライベートサロンとして高単価も狙える | ・管理規約で「店舗利用不可」「不特定多数の出入り禁止」の場合が多い (最重要確認事項) ・集客はWebや紹介がメイン (看板が出せない) ・生活音 (隣室/上下階) の防音対策が必須 ・アロマ等の匂い対策が必要 ・防犯面の強化 (オートロック+玄関鍵、カメラ等) が必須 |
|---|---|---|---|---|
| 路面店 (1階) | 高い (数百万〜数千万円) ・高額な保証金、礼金 ・内装/設備工事費 ・美容機器、備品 | 高い ・高額な家賃 ・人件費 (複数スタッフの場合) | ・視認性抜群で「偶然発見」されやすい ・看板効果が高く、集客力がある ・ブランディングしやすく、信頼感を与えやすい | ・初期費用 (特に保証金・内装費) が非常に高額 ・家賃が高く、固定費負担が大きい ・外からの視線に対するプライバシー確保 (窓フィルム、カーテン等) が必須 ・競合との差別化がより重要になる |
| シェアサロン | ほぼゼロ ・保証金不要の場合が多い ・内装/設備費不要 | 変動 (売上歩合 or 時間貸し) ・光熱費等込みの場合も | ・低リスクで即日開業可能 ・ベッドやタオル等の設備投資が不要 ・他のセラピストとの情報交換が可能 | ・独自性 (世界観) を出しにくい ・ブランディングが難しい ・売上が上がると利用料が割高になる場合がある ・他の利用者とのルール遵守や兼ね合いが必要 ・予約が取りにくい時間帯が発生する可能性 |
マンションの一室は、家賃を抑えられ、隠れ家的な雰囲気を出しやすいメリットがあります。しかし、「生活音」やアロマの「匂い」が隣室に漏れるリスク、そしてそもそも「エステサロンとしての利用が管理規約で許可されているか」という大きな壁があります。契約前に必ず管理組合に使用用途を確認し、防音・防臭対策を徹底する必要があります。女性オーナー一人での運営には適していますが、スタッフを増やすには手狭になりがちです。
路面店(1階テナント)の最大のメリットは、「視認性」の高さと「入店しやすさ」です。看板効果も高く、新規顧客の獲得には有利です。しかし、その分「家賃」が高く、内装もゼロから作り込む必要があるため「初期費用」が膨らみます。また、外からの視線が気になるため、プライバシー確保のための工夫(窓のフィルム、カーテンなど)が必須。資金力があり、地域密着で認知度を高めたいサロンに適しています。
シェアサロン(面貸し)は、ベッドや設備が既に整っており、初期費用ゼロ・低リスクで「すぐに開業できる」のが最大の魅力です。しかし、他のセラピストと空間を共有するため、「独自の世界観」を出しにくく、ブランディングには限界があります。また、利用料(歩合制や時間貸し)によっては、売上が上がると割高になるケースも。まずは小さく始めたい方、副業として試したい方には有効な選択肢です。
物件の「間取り」と「広さ」は、お客様の快適性とスタッフ(オーナー様)の作業効率、ひいてはサロンの「売上」に直結します。お客様がリラックスでき、スタッフが無駄なく動ける「売れる動線」を作るためには、最低限必要なスペースと、水回りなどの設備配置に関する知識が不可欠です。
理想的なサロンは、機能ごとに空間が明確に「ゾーニング(区分け)」されています。お客様をお迎えする「受付」、リラックスしてお待ちいただく「待合」、プライベートが守られた「施術室」、身支度を整える「パウダースペース」。これらがスムーズな動線で繋がっていることが重要です。特に、施術室を通らないとトイレに行けない、といった間取りは絶対に避けましょう。
1ベッド(個室)サロンの場合、施術室だけで最低6〜8畳、全体で10〜15坪程度は欲しいところです。2ベッドにするなら、全体で20坪以上が目安。ベッド数が増えれば「回転率」は上がりますが、その分、待合やバックヤードも広くする必要があり、家賃も上がります。ご自身の施術スタイル(マンツーマンか、複数同時進行か)と損益分岐点から、最適なベッド数と面積を判断しましょう。
内見時に必ず確認すべき3大ポイントです。「水回り」:シンクや洗濯機を置きたい場所に給排水管はあるか? 「給排気」:換気扇は適切に機能しているか、ダクトの位置は適切か? 「コンセント」:ベッド周りや機器を置きたい場所に、十分な数と容量(電圧)のコンセントはあるか? これらの確認を怠り、契約後に高額な追加工事が必要になるのが、最も多い失敗パターンです。
最新の美容機器を導入しても、それを動かすための「設備」が整っていなければ宝の持ち腐れです。特に高出力の痩身機器などは、家庭用とは比較にならない電力が必要。また、機器の稼働音や振動、施術に伴う匂いへの対策も不可欠です。物件契約前に、導入予定の機器スペックから逆算した設備要件を確認することが絶対条件です。
導入したい美容機器の「合計消費電力(W)」を計算し、物件の「契約アンペア数(A)」が十分かを確認します。目安として、複数の高出力機器(例:痩身機+脱毛機)を同時に使う可能性があるなら、最低でも50A〜60Aは必要です。さらに、機器ごとに「専用回路」を設けないと、同時使用時にブレーカーが落ちます。電気工事の専門家と相談し、安全な電源計画を立てましょう。
エステサロンは静かな環境が求められますが、同時に「音」を発生させる場所でもあります。心地よいBGM、お客様との会話、そして美容機器の稼働音(特にキャビテーションの骨伝導音や吸引音)が、隣室や階下に響いてクレームにならないよう、「防音・防振対策」は必須です。壁や床の遮音性能を物件契約前に確認し、必要であれば防音材の施工や防振マットの設置を検討しましょう。
適切な換気は、快適な空間維持と衛生管理の基本です。特に、アロマを使用する場合、匂いがこもりすぎない工夫が必要です。また、脱毛(特にレーザーや光)では特有の焦げた匂いが発生する場合があり、痩身施術(発汗を伴う場合)では汗の匂いが残ることも。これらの施術を行う場合は、建築基準法で定められた以上の換気能力を持つ換気扇や、空気清浄機の導入を検討すべきです。



電力、給排水、換気といった「インフラ」は、開業後に最も後悔しやすいポイントです。内装デザインよりも優先してください。特に(株)イレブンが扱う高出力機器は、専用電源が必要な場合がほとんどです。契約前に物件の図面を持って私たちにご相談いただければ、どのインフラが必要か、業者様への指示内容もアドバイスいたします。
開業費用の中で最も大きなウェイトを占めるのが「内装費」です。しかし、物件の選び方次第で、このコストは大幅に削減可能です。「スケルトン」か「居抜き」か、契約条件はどうなっているか。物件を見極める目を養うことが、賢くコストを抑え、浮いた予算を機器や広告に回すための鍵となります。
「スケルトン」は内装が何もない状態。「居抜き」は前のテナントの内装や設備を流用できる物件です。どちらが良いかは、オーナー様のコンセプトと予算次第です。
【スケルトン vs 居抜き 比較表】
| 比較項目 | スケルトン | 居抜き |
| 初期費用 | 高額(全てゼロから作る) | 低額(設備を流用できる) |
|---|---|---|
| 工事期間 | 長い(1〜2ヶ月) | 短い(最短1〜2週間) |
| デザイン自由度 | 高い(理想の空間を実現可能) | 低い(既存の間取りに縛られる) |
| リスク | 予算オーバーしやすい | 設備の老朽化、隠れた不具合のリスク |
| おすすめ | ・世界観を重視したい ・資金に余裕がある | ・初期費用を抑えたい ・スピード開業したい |
契約時に必ずチェックすべき2大ポイントです。「原状回復条項」:退去時にどこまで元に戻す義務があるか。スケルトン状態に戻す必要がある場合、解体費用が高額になります。「看板掲出権」:希望する場所に、希望するサイズの看板を出せる権利があるか。看板が出せない、または別途費用がかかる場合、集客コストが予想以上に膨らむ可能性があります。契約書の隅々まで確認し、不明点は必ず質問しましょう。
魅力的な物件でも、交渉次第でさらに有利な条件を引き出せる可能性があります。「フリーレント」:入居後、数ヶ月間の家賃が無料になる期間。内装工事期間中の家賃負担を軽減できます。「内装補助」:オーナー(大家)が内装費用の一部を負担してくれるケース。空室期間が長い物件などは、これらの交渉に応じてもらいやすい傾向があります。臆せず、不動産仲介業者を通じて交渉してみましょう。
物件契約は、開業後の運営を縛る重要な法的行為です。「こんなはずじゃなかった」を防ぐため、契約前に確認すべき法務・許認可のポイントをリストアップしました。特にマンションの一室を借りる場合、「使用用途」の確認は絶対です。トラブルを未然に防ぎ、安心して運営できる土台を築きましょう。
マンションやオフィスビルの一室を借りる場合、最も重要なのが「使用用途」の確認です。賃貸借契約書や管理規約に「住居専用」と記載されている場合、原則としてサロン営業はできません。「エステサロン(または店舗・事務所)としての使用が可能」と明文化されているか、必ず確認してください。不明確な場合は、管理組合やオーナーに書面で確認を取り、許可を得ることが絶対条件です。
賃貸借契約には「普通借家」と「定期借家」があります。「定期借家」は契約期間満了で必ず契約が終わるため、長期的な運営にはリスクがあります。契約更新時の「更新料」の有無や金額、万が一移転する場合の「解約予告期間(通常3〜6ヶ月前)」も確認が必要です。これらの条件は、将来の移転計画や資金繰りに影響するため、契約前にしっかりと把握しておきましょう。
特にマンションサロンの場合、開業前に上下左右の入居者へ挨拶に伺い、「エステサロンを開業する旨」と「騒音や匂いには最大限配慮する旨」を伝え、「事前同意」に近い形を得ておくことが、後々のクレームを防ぐ最も有効な手段です。また、サロンの入口やHPに「完全予約制」「待合スペース以外での待機禁止」といったルールを明示することも、近隣への配慮として重要です。
家賃は、サロン経営における最大の「固定費」です。この家賃設定を間違えると、損益計算書(PL)が常に赤字となり、経営が立ち行かなくなります。「憧れのエリアだから」という理由だけで決めるのではなく、「売上予測から逆算して、無理なく払える家賃か」という視点で冷静に判断することが不可欠です。
一般的に、サロン経営における「売上対家賃比率」は10%以内が理想とされます。つまり、目標月商が100万円なら、家賃は10万円以下に抑えたいところです。
【簡易シミュレーション表(家賃と損益分岐点)】
(前提:客単価 8,000円、原価率 20%)
| ケースA(家賃 10万円) | ケースB(家賃 20万円) | |
| 固定費合計 | 30万円(家賃10万 + 他20万) | 40万円(家賃20万 + 他20万) |
|---|---|---|
| 損益分岐点売上 | 37.5万円 | 50万円 |
| 黒字化に必要な客数 | 月47人 (1日 約2人) | 月63人 (1日 約3人) |
家賃が倍になると、黒字化に必要な客数も大きく増えます。ご自身の集客力で達成可能な稼働率から、払える家賃の上限を算出する必要があります。
開業直後の3ヶ月は、まだ売上が安定しない最も苦しい時期です。この期間を乗り切るためには、家賃、リース料、人件費といった「固定費」を極力抑えることが重要です。同時に、新規顧客を獲得するための「広告宣伝費」は、ある程度確保する必要があります。開業資金の中で、この「固定費」と「広告費」のバランスをどう取るかが、初期の資金繰りを安定させる鍵となります。
物件契約時には、家賃の数ヶ月分の「敷金(保証金)」と、「保証会社」への加入が求められることが一般的です。これらは開業資金を大きく圧迫します。可能であれば、敷金の減額交渉や、保証会社を利用することで敷金を下げる交渉を試みましょう。少しでも初期費用を抑え、手元の現金(キャッシュフロー)を厚く持つことが、開業後の不測の事態に備えるための重要な戦略です。
物件を決める前に、そのエリアの「競合」と「需要(ターゲット層)」を徹底的に調査することが成功の絶対条件です。「地図」で競合サロンの位置と数を把握し、「口コミサイト」でその評価を分析。さらに、実際に街を歩き、人々の「動線データ(流れ)」を肌で感じることで、本当に「勝てるエリアか」を見極めます。
まずはGoogleマップなどで、候補物件から半径500m〜1km圏内にある「競合エステサロン」を全てリストアップします。それぞれのHPをチェックし、「メニュー」「価格帯」「ターゲット層」「強み」を分析し、地図上にマッピングしましょう。競合がひしめくレッドオーシャンか、まだ参入余地のあるブルーオーシャンか。そして、ご自身のサロンが設定したい価格帯が、そのエリアで受け入れられるかを見極めます。
ホットペッパービューティーやGoogleマップの「口コミ」は、お客様の「生の声」の宝庫です。競合サロンの口コミを読み込み、「どんな点が評価されているか(例:技術、接客、空間)」「どんな不満があるか(例:予約が取れない、効果が感じられない)」を徹底的に分析します。また、掲載されている「写真」から、どんな雰囲気や施術が支持されているかを読み解き、ご自身のサロンが「選ばれる理由」を作るためのヒントにします。
ターゲット層が「いつ」「どこを」歩いているのかを知ることは、立地選定と集客戦略に不可欠です。候補物件の周辺を、時間帯(昼・夜)と曜日(平日・週末)を変えて実際に歩き、人の流れ(人流)を観察しましょう。オフィス街なら平日の昼と夜、住宅街なら週末の昼がターゲット層の活動時間かもしれません。この人流データから、最適な営業時間や、チラシ配布のタイミングなどを判断します。



エリア調査は「ここにサロンを出したい」という願望を「ここなら勝てる」という確信に変える作業です。駅近でもターゲット層がいなければ意味がありません。逆に駅から遠くても、競合がおらず、地域住民の「美容ニーズ」を満たせるなら、そこは“勝ち物件”です。私たち(株)イレブンは、全国の成功事例から、そのエリアで勝てるコンセプト作りもご支援します。
現代のサロン集客において、InstagramなどSNSでの「映え」は無視できません。お客様が思わず写真を撮りたくなるような空間は、自然な口コミ(UGC)を生み出し、新規顧客と指名(リピート)を増やします。外観から内装、小物に至るまで、「写真映え」を意識した導線設計が、広告費をかけずに集客する鍵となります。
お客様がサロンに入るかどうかは、最初の「3秒」で決まります。外観や入口が暗い、何の店か分かりにくい、といった印象は致命的です。「安心感」と「期待感」を与えるサイン(看板)計画が重要です。店名だけでなく、「何ができるサロンか(例:肌質改善フェイシャル)」を分かりやすく伝え、清潔感のある入口周りを演出することで、初見のお客様の入店ハードルを下げることができます。
お客様が最も写真を撮りたくなる場所は「パウダースペース」です。施術後、綺麗になった自分を見て、気分が高揚する空間だからです。ここに、女優ミラーのような「自然光に近い照明」や、ブランドロゴが入った壁などを設置し、「撮影スポット」として設計しましょう。お客様が「#サロン名」をつけて投稿してくれれば、最高の無料広告となります。光の設計が、SNS時代の集客を左右します。
サロンの「世界観」は、内装だけでなく、細部の「小物」で表現されます。例えば、待合室に置く雑誌、提供するハーブティーのカップ、トイレのアメニティなど。これらをサロンのブランドカラーやコンセプトに合わせて統一し、随所に「写真映え」するポイントを作ることで、お客様のSNS投稿を促します。お客様自身が、サロンの「広告塔」になってくれるような仕掛け作りが重要です。
オーナー様ご自身、そして将来のスタッフが「長く快適に働けるか」という視点も、物件選びでは非常に重要です。バックヤードの効率性や休憩スペースの快適性は、日々のストレスを軽減し、離職率を下げ、結果的にサロンのサービス品質向上に繋がります。働きやすさも「設備投資」の一つと考えましょう。
バックヤードは「サロンの心臓部」です。お客様からは見えない位置に、十分な「収納スペース」を確保することが絶対条件。タオルや商材が溢れかえっている状態では、効率的な運営はできません。洗濯機からリネン庫、施術室への「リネン動線」は最短距離に。商材の「在庫管理」がしやすい棚割りに。ゴミの分別スペースも確保。このバックヤード設計が、日々の運営ストレスを決めます。
スタッフ(オーナー様自身も含む)が、お客様と顔を合わせずに休憩し、着替えられる「専用スペース」は必ず確保しましょう。狭くても構いません。オンとオフを切り替えられる空間があるだけで、精神的な負担は大きく軽減されます。労働基準法の観点からも、適切な休憩時間の確保は事業主の義務です。スタッフが「大切にされている」と感じる環境が、定着率を高めます。
見落としがちですが、日々の運営でストレスになるのが「モノの移動」です。新しい商材や備品が「搬入」しやすいか(エレベーターはあるか、階段は狭くないか)。大量に出る「ゴミ」をスムーズに捨てられるか(専用ゴミ置き場はあるか)。お客様の施術中に「宅配便」が来ても、スムーズに対応できる動線か。こうした細部への配慮が、日々の小さなイライラを無くし、快適な職場環境を作ります。
サロン経営は、季節や天候にも左右されます。特に、雨や雪の日に「行きたくないな」と思われてしまっては、大きな機会損失です。悪天候でもお客様が安全・快適に来店でき、サロン内でも快適に過ごせる「備え」を、物件選びと設備計画の段階から考慮しておくことが重要です。
雨の日の来店ハードルを下げる工夫です。物件の入口まで「屋根付きのアプローチ」があれば理想的ですが、無くても「傘置き」スペースと、濡れた床で滑らないための「滑り止めマット」は必須です。お客様が濡れた傘や靴でストレスを感じない配慮が、悪天候でも選ばれるサロンの条件です。濡れた床をすぐに拭けるよう、モップなどの清掃用具もすぐに取り出せる場所に配置しましょう。
梅雨時期や冬場の「結露」は、壁紙の「カビ」の原因となり、不衛生な印象を与えます。特に北向きの部屋や、窓の断熱性が低い物件は注意が必要です。十分な換気能力を持つ空調設備と、調湿効果のある内装材(珪藻土など)を選ぶことで、カビの発生を抑えられます。清潔感はサロンの命。湿気対策は、物件選びの段階から重要なチェックポイントです。
お客様が最も快適だと感じる室温・湿度を、年間を通じて維持できる「空調能力」があるかは重要です。特に夏場の西日が強い、冬場の底冷えがするなど、物件の断熱性能や窓の大きさによって、光熱費と快適性は大きく変わります。内見時には、季節ごとの日当たりや外気温の影響を想像し、エアコンの容量が十分か、サーキュレーターなどで空気を循環させる必要があるかなどを評価しましょう。
理想の物件が見つかっても、契約・入居までには多くのステップがあります。「いつ」「何を」すべきか、全体の流れを把握しておくことで、スムーズな開業準備が可能になります。ここでは、内見からオープンまでの大まかなタイムラインと、各段階でのポイントを解説します。内見チェックリスト:30項目の即断ポイント
内見は、理想と現実をすり合わせる重要な機会です。「女性目線の物件チェック30項目」(※後述のダウンロード資料参照)を活用し、チェック漏れを防ぎましょう。
主要チェック項目
内装や設備の費用は、業者によって大きく異なります。必ず「複数の業者」から「相見積り」を取り、内容と金額を比較検討しましょう。また、家賃や契約条件(フリーレント、敷金など)も、諦めずに「交渉」することが重要です。不動産仲介業者を味方につけ、オーナー(大家)との良好な関係を築きながら、少しでも有利な条件を引き出す努力が開業資金を大きく左右します。
物件の「引渡し日」が決まったら、そこから「オープン日」までの逆算スケジュールを作成します。
最後に、私たち(株)イレブンが実際に支援してきたサロン様の「失敗」と「成功」の事例から、物件選びのリアルな教訓をお伝えします。机上の空論ではなく、現場で起きた具体的なケースを知ることで、ご自身の物件選びに活かせるヒントが必ず見つかるはずです。
失敗事例
成功事例
【失敗回避事例】
マンションの一室で開業後、アロマの匂いと痩身機器の振動音で、隣室からクレームが入ったサロン様。幸い、契約前に管理組合へ「エステ営業の許可」と「防音・防臭対策の計画」を提出し承認を得ていたため、移転は回避できました。事前確認と対策計画の提出がいかに重要かを物語る事例です。
【成功事例】
都心一等地で家賃は高いものの、視認性抜群の路面店を選んだサロン様。当初は資金繰りに苦戦しましたが、その「立地」を最大限に活かす広告戦略(看板デザイン、MEO対策、地域メディアへの露出)に集中投資。結果、広告費をかけずに新規客が自然と集まるようになり、高家賃を余裕で回収できる高収益サロンへと成長されました。立地の強みを活かす戦略の重要性を示す例です。
【成功事例】駅から徒歩15分と立地は不利でしたが、「駐車場完備」「完全個室の隠れ家」「特定技術(例:深層リンパ)の専門サロン」という強みを明確にしたサロン様。HPやSNSでその「専門性」と「世界観」を徹底的に発信し、「わざわざ 찾아行く価値のあるサロン(目的地)」としてブランディングに成功。駅近の競合とは違う土俵で、高単価・高リピート率を実現されています。



物件選びに「絶対の正解」はありません。駅近でも失敗するサロンもあれば、駅から遠くても大成功するサロンもあります。大切なのは、ご自身の「コンセプト」と「ターゲット」に合った物件を選び、その物件の「強み」を最大限に活かす戦略を描くこと。そして、女性オーナー様ご自身が「安全に、長く働ける」場所であること。私たちは、その最適な物件選びから伴走支援します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。物件選びの重要性をご理解いただけたでしょうか?(株)イレブンでは、これから開業を目指す女性オーナー様を応援するため、この記事で解説したノウハウを凝縮した「オリジナル資料」を無料でプレゼントしています。
内見時に「これだけは絶対に確認すべき!」という30項目をリスト化しました。
資料内容(一部抜粋)
あなたのサロンは、家賃いくらまでなら払える?「目標売上」「想定客単価」「目標稼働率」などを入力するだけで、「損益分岐点」や「許容できる家賃上限」を自動で計算できるExcelシミュレーターです。感覚ではなく、数字に基づいて物件の予算を決めるための必須ツール。融資申請時の資料としても活用できます。
「どんな内装にしたいか」「どんな看板を出したいか」を、内装業者やデザイナーに的確に伝えるための「発注(要望整理)テンプレート」です。コンセプト、ターゲット層、必須設備、希望イメージなどを記入するだけで、業者とのイメージ共有がスムーズになり、見積もり依頼や打ち合わせの時間短縮にも繋がります。















