扶養内で自宅サロンを続ける|2026年改正後「年収の壁」の正しい読み方

この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)

株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。

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「扶養内でやりたい」という相談は本当に多いのですが、話を聞いていくと、まったく別の2つの制度がひとまとめになっていることがほとんどです。しかも自宅サロンは会社員やパートと計算方法が違うため、ネットでよく見る「178万円」「136万円」といった数字をそのまま当てはめると判断を誤ります。ここを正確に押さえておくと、年末に慌てることがなくなりますよ。

「税金の扶養」と「社会保険の扶養」はまったく別物

まず、この2つを頭のなかで分けてください。基準になる金額も、計算のしかたも、外れたときのダメージも別々です。

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比較項目税金の扶養(配偶者控除)社会保険の扶養(健康保険の被扶養者)
何で判定するか合計所得金額年間収入から直接的必要経費を引いた額
2026年分の基準62万円以下(改正前は58万円以下)130万円未満
判定する人税務署(確定申告で確定)配偶者が加入する健康保険組合
期間の区切り1月から12月の暦年これから先1年間の見込み
外れるとどうなるか配偶者側の所得税・住民税が増える国民健康保険と国民年金を自分で負担する

金銭的なインパクトが大きいのは圧倒的に社会保険の扶養のほうです。税金の扶養が外れても増えるのは配偶者側の税額ですが、社会保険の扶養が外れると保険料をまるごと自分で払うことになります。優先して見張るべきはこちら。

税金の扶養|2026年から配偶者控除のラインは「所得62万円」

2026年(令和8年)分から、配偶者控除の対象になる配偶者の合計所得金額の要件が、58万円以下から62万円以下へ引き上げられました。給与だけで働く方の場合、これが年収136万円以下という目安に換算されます。ニュースで話題になった「年収の壁が178万円に」という話も、給与所得控除を前提にした給与所得者向けの数字です。

イレブンからのアドバイス

じゃあ自宅サロンも136万円まで大丈夫ってこと…?

そこが落とし穴です。136万円も178万円も、給与所得控除を差し引いた結果の金額。自宅サロンの売上は給与ではなく事業所得なので、給与所得控除は使えません。代わりに使うのが必要経費と青色申告特別控除です。

自宅サロンの所得の出し方

売上 − 必要経費 − 青色申告特別控除 = 事業所得

この事業所得(他に収入がなければ合計所得金額)が62万円以下なら、配偶者控除の対象です。青色申告特別控除は2026年分までなら最大65万円。つまり「売上 − 必要経費」が127万円以内であれば収まる計算になります。

たとえば化粧品や消耗品、機器の減価償却などで年間の経費が50万円かかっているサロンなら、売上177万円までは配偶者控除の枠内。給与の136万円より広く見えますよね。経費が積み上がるほどラインは上がっていきます。

ただし青色申告特別控除の65万円をフルに使うには、複式簿記での記帳と、e-Taxによる申告または電子帳簿保存が必要です。白色申告のままだとこの65万円がまるごと使えません。開業届と青色申告承認申請書は早めに出しておいてください。

社会保険の扶養|自宅サロンは先にこちらから外れやすい

ここが一番の落とし穴で、相談を受けていても認識されていないことが多い部分です。社会保険の130万円は、税金と同じ計算では見てもらえません。

健康保険の被扶養者かどうかは、収入から直接的必要経費を引いた額で判定されます。この直接的必要経費というのが曲者で、所得税法でいう必要経費よりも範囲がかなり狭いのです。原材料費のように「それがなければ事業が成り立たない費用」は認められますが、減価償却費は認められません。広告宣伝費や通信費、水道光熱費なども認められないことが多い、とされています。

引ける可能性が高い引けないことが多い
施術に使う化粧品・ジェルなどの材料費
タオルやシーツなどの消耗品費
美容機器の減価償却費
広告宣伝費・ホームページ費用
通信費・水道光熱費の家事按分
青色申告特別控除の65万円

さきほどの「売上177万円・経費50万円」のサロンで考えてみます。税金の上では所得62万円なので配偶者控除の対象。ところが経費50万円のうち材料費が30万円だけだった場合、社会保険の判定額は147万円となり、130万円をあっさり超えてしまいます。税金の扶養には残れるのに、社会保険の扶養からは外れるというねじれが起きるわけです。

どこまでを経費として認めるかは健康保険組合ごとに違います。協会けんぽより組合健保のほうが厳しい傾向。ご主人の勤務先の健保に、開業前の段階で一度確認しておくと安心です。

扶養を外れるかどうかの判断軸

売上が伸びてくると、必ずこの分岐に立ちます。判断で大事なのは「超えるか超えないか」ではなく、中途半端に超えるのが一番損だという構造を理解しておくこと。

社会保険の扶養を外れると、国民健康保険料と国民年金保険料が発生します。国民年金は定額ですが、国民健康保険料は住んでいる市区町村と所得で大きく変わるため、金額はお住まいの自治体のサイトで確認してください。この負担を上回るまで売上を伸ばせないなら、扶養の枠内に収める設計のほうが手元に残ります。

判断のものさし
  • 枠内に収めるなら/営業日数と単価から年間の上限売上を先に決め、逆算して予約枠を組む
  • 外れるなら振り切る/保険料の増加分を吸収できるところまで一気に伸ばす前提で、単価と稼働を設計し直す
  • 迷ったら/12月に慌てて予約を止める事態を避けるため、9月ごろに一度その年の着地見込みを出しておく

なお、ここで挙げた金額は2026年分の制度に基づいたものです。年収の壁をめぐるルールはここ数年で毎年のように動いていますし、社会保険の判定は最終的に健康保険組合の裁量部分が残ります。実際に申告する際は、国税庁の最新情報と配偶者の勤務先への確認を必ず挟んでください。

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この記事を書いた人

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